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千分の一話噺

第191章 名探偵はいつも全力


俺は懸命に自転車を漕いでいた。
「まったく!何で俺がぁ!」
梅が咲き誇る川沿いの道は、ほんのりと梅の香りが漂う。


話しは先月の依頼から始まった。
事務所のオーナーの依頼で、知り合いの生き別れた子供をどうにかこうにか探し出し無事に報酬(と言っても家賃だが…)にありつけた。

そこまでは良かったのだが、まさかオーナーがSNSをやっていたとは頭が痛い…。

人探しのプロとして俺の事務所を紹介しやがって、電話が鳴り止まなくなった。
仕事が増えるのは良いが、俺一人でやってるしがない探偵事務所にそんな仕事をこなせる訳がなく、SNSの影響が収まるまで人探しは断り続けていた。


ところがそんな中に記憶を探してくれと言う依頼があった。
「記憶を探せ?記憶喪失って事か?」
その依頼人は16歳までの記憶がない状態で保護されたそうだ。
保護された時に本人に関する物は何もなく、名前も覚えていなかった。
それが20年経ってこの街に越してきた時、何故か名前を思い出した。
「私はここで暮らしていたのかも知れない
だから名前を思い出したんじゃないかと…
だから、私の記憶を探して下さい」
これを運が悪いことにオーナーに知られ、今月の家賃にされてしまった。

そして…。

俺は自転車で梅が咲き誇る街中を駆けずり回る事になった。



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