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千分の一話噺

第190章 歳の差夫婦⑧・あの頃…


長かった冬も終わり、すっかり春めいてきた三月半ば。
それでも曇り空の日は肌寒い。

今日はホワイトデー。

旦那と付き合っていた頃は、私は学生だった。
しかも遠距離恋愛って事もあって、春休みまで何も出来なかったのを思い出した。
「あの頃はホワイトデーにこうして一緒に買い物出来るなんて思わなかったわ」
「…そうだったな」
ホワイトデーのプレゼントはもちろんワイン。
普段は安いチリ産なんだけど、ちょっとしたイベントや記念日とかはフランス産のちょっと高いワインを買ってもらえる。

「今日はどのワインにする?
ホワイトデーだからって、あまり高いのは勘弁してくれよ」
「どれが良いのかな?美味しいのが良いな」
「…ワイン好きなのに何も知らないんだね」
旦那は苦笑いしながらワインの事を語り出した。

「フランスのワインは葡萄の産地で分けられるんだ
日本ではボルドーやブルゴーニュが有名だけど、大きくは七ヶ所あってそれぞれにたくさんの酒蔵があるらしいよ
ボルドーは赤ワイン、シャンパーニュはシャンパンが有名だよね
産地によって葡萄の品種や作り方の違いから特徴が出るんだろうね」
「ふわぁ~、ワインってどれだけ種類があるの?」
私は旦那の解説を聞いて知恵熱が出そうだった。

結局は値段とラベルデザインの好みで選んで買ってもらった。

お店を出ると冷たい物が頬に当たる。
「えっ?雪?」
「名残雪か…
昔の君の涙が今頃降ってきたのかな?」
私達は付き合っていた頃と同じ様に繋いだ手を旦那の上着のポケットに入れて足早に家路に着いた。


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