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千分の一話噺

第189章 俺とあいつ⑪・シャングリ・ラ


あれは一ヶ月前…。


「ねぇ、シャングリ・ラって知ってる?」
あいつがまた唐突にへんな事を言い出した。
俺の眉間にシワが寄る。
「君はシワを寄せない方が良い男だぞ」
「うるせぇ!
…シャングリ・ラ?
新しいレストランか何かか?」
「違うよ、本当のシャングリ・ラ!」
ムキになるこいつ。
「本当のって…、あれは昔話に出て来る幻の村だろ?
あるわけねぇじゃん」
「それが、モデルになった村があるんだって…」
その時のこいつの目はキラキラと輝き出していた。



そして今朝、あいつからメールが着た。
《ちょっと中国でシャングリ・ラ探してくるね》
すぐに電話するが何の反応もない。
「あのバカッ!またやりやがった…」

『シャングリ・ラ』と言う言葉は理想郷や楽園などの代名詞になっているが、ジェームス・ヒルトンの小説「LOST HORIZON」で描かれた想像上の場所の名前だ。
『シャングリ・ラ』の意味は『桃源郷』のサンスクリット語読みで、チベット仏教の経典にあるシャンバラ王国を模したと言われる。
その『桃源郷』は中国の晋の時代、詩人の陶淵明が書いた「桃花源記」に出て来る幻の村と言われている。


数日後、またあいつからのメールだ。
《今、中国の桃花源って村に来てるんだ
ここは桃源郷のモデルと言われてるんだよ》
添付されていた写真は桃の花が咲く長閑な村の風景だった。



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