• テキストサイズ

千分の一話噺

第188章 都会の風


「…くしょん!
今年も花粉が多いのかな…」

海と共に暮らし、夏は木々の緑といっぱいの青空、冬は寒さ厳しい中にもどこか暖かかった故郷…。
ビルに切り取られた青空、人込みの間を抜けてくる風、夏は夜中でも30度を超え、冬は気温以上に冷たく冷える都会…。

私もすっかり都会に慣れてしまった様だ。
故郷に居たときは花粉症じゃなかったのに、都会に引っ越して来てから花粉症になった。
都会の空気は花粉だけじゃなくいろいろな物が混ざってるらしい。

故郷を離れて七年…。

離れたくて離れた訳じゃないけど、全てなくなってしまった故郷に戻る気はまだ起きない。
それに都会暮らしにも慣れたし、便利で悪くない。
私は答えを出して前に進む決意をした。


「この前の返事…、良いわよ」
「ん?…無理してないか?
俺はいつでも構わないんだぜ」
「…もう七年も経つのよ
私も前を向かなきゃ」

彼は七年も私の答えを待ってくれていた。

「…くしょん!」
「風邪か?」
「…花粉症よ
私も都会に慣れちゃったみたいね」
彼は何も言わず抱きしめてくれた。


end
/ 1578ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp