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千分の一話噺

第183章 鬼は外


「鬼は~外!福は~内!」

立春の前日、春の節分の豆をまく声がそこかしこで響いていたその昔…。



「ふん、あんな豆くらいどうと言うことはない」
青鬼は嘯(うそぶ)く。
身の丈八尺、その筋骨隆々たる身体は多少の攻撃ではびくともしない。
「お前は油断大敵と言う言葉を知らんのか?」
隣にいる赤鬼が指摘した。
身の丈九尺、青鬼より少し大きい身体は同様に強靭だ。
「兄じゃはあんな豆粒が怖いのか!?我らを傷付けるとでも言うのか!?」
青鬼はムキになって反論する。
「豆などがどうこうではない
我らより力が弱い人間は、我らよりずる賢いと言う事が問題なのだ」
赤鬼は思慮していた。
「どういうことだ?
兄じゃはたまに難しい事を言うが、人間などこの金棒で叩き潰してしまえば良いだろう?」
青鬼が巨大な金棒を振るってみせる。
「そんな簡単にはいかないさ
人間は神を味方に付けている
社を作り祭り上げ、貢ぎ物を捧げ、拝み倒して取り入ったんだ
どれだけずる賢いか分かっただろ」
「ちっ、神に頼るなんて卑怯な奴らだな
神が相手では確かに厄介だ…」
赤鬼と青鬼は腕を組み首を捻って考え込んでしまった。


「鬼は~外!福は~内!」
今年も鬼は見てるだけで手を拱いている。


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