第179章 名探偵の年末大混乱
俺が目覚めたのは、もう昼過ぎていた。
「…やっぱり正月は餅だよな」
俺はカセットコンロを引っ張り出して来て、事務所のテーブルの上に置いた。
昨日の夜、帰り道にコンビニで切り餅を買っておいた。それを焼きはじめた。
「しかし昨日は大晦日だって言うのにひでぇ仕事だった…
まだあちこち身体が痛いぜ」
平成29年12月31日、もう依頼もないだろうと事務所で寛いでいた。そこに近所の女の子が飛び込んで来た。
「探偵のおじさん、コロがいなくなっちゃった!」
「コロが?…まぁ腹減ったら戻ってくるよ」
「昨日から帰ってこないの…
お金はお年玉で払うから探して!」
女の子は目に涙を溜めて俺を見詰めた。
「…分かった、探すから泣くなよ!
とりあえず家に帰って待っていろ」
俺は女の子の頭を撫でて一緒に外に出た。
コロは普段から庭で放し飼いにされているが逃げ出した事は一度もないそうだ。ただ、雑種だし親も普通のサラリーマン、犬を誘拐したとは思えない。何かの拍子に庭と道路を隔てる扉が開き外に出たんだろう。
女の子を家に送るとすぐに近所に聞き込みを始めた。だがコロの姿を見掛けた者はいなかった。
忽然と姿を消したコロ…。
悲しみにくれる少女…。
運命に翻弄される探偵は、コロを探し、彼女を悲しみの淵から救い出す事は出来るのか?
次回、『大捜査』こうご期待!
end