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千分の一話噺

第178章 歳の差夫婦⑦・凶


「今年も美味しいワインがたくさん呑めます様に…」
「…願いが声に出てるよ」
苦笑いの旦那に言われて気が付いた。

お参りを済ませ帰ろうとしたら旦那が私の手を引いた。
「じゃあ、おみくじ引こうか」
「えっ?おみくじ…
私、くじ運が悪いのよねぇ」
「おみくじは吉凶の善し悪しじゃないよ
大事なことは細かい部分に書いてあるんだ
それは生活に生かす神様からのアドバイスなんだ」
旦那の言うことは分かるけど、吉凶は気になるし…。
「でも凶より吉の方が良いじゃない」
「陰陽道には『陽極まれば陰生ず、陰極まれば陽生ず』」という言葉があってね、大吉や大凶など対極にあるものはその逆方向に転じ易いと云われてるんだ
だから、吉でも気をつけないと災厄に会うし、凶なら用心して誠実に事にあたれば必ず御加護があるってね」
旦那にこう言われたら引かない訳にはいかなかった。

「えぇーいっ!」
私は気合いを入れておみくじを引いた。
「…げっ!やっぱり凶だぁ!」
私は涙目で旦那を見た。
「だから、吉凶じゃないって言っただろ」
「でも…」
「良くないおみくじは神社に結び付けておくと変わるって言うけど、自分への戒めとして持ち歩くのも良いんだよ」
「もう一回引いちゃダメ?」
私は旦那に聞いてみた。
「引き直しをしちゃいけないって決まりはないけど、おみくじはお参りしてから引くのが決まりだから、引き直すなら後日改めてお参りしてからね」
「えぇ~そんなぁ…」
「しょうがないなぁ…
ワイン買って帰ろうか」
「やったぁ!」
私達はおみくじを結び付けて神社を後にした。
因みに旦那のおみくじも凶だった。



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