第177章 かぐや姫
2018年1月1日。新年の幕は開いたばかり…。
しかし、今宵はいつもと少し違っていた。
(そういえば今日ってスーパームーンだったわね)
私はそんな事を思い、月を見上げた。
スーパームーン…。月の軌道は楕円な為、地球との距離は常に違う。その距離が一番近づいた時の満月をスーパームーンと呼ぶ。通常より大きく明るい満月だ。
(あれ?でも何か大き過ぎない?)
見上げた満月は見る見る大きくなっていった。
「えっ?えっ!?えぇぇぇーっ!」
あまりの眩しさに目が奪われた。瞼を閉じてもその明るさに目が開けられない。
しばらくして眩しさがなくなってから目を開けると、そこは別世界だった。
「ど…どこ…、ここ?外国?」
私は周りを見回したが見たことのない景色が広がっていた。
建物は中世ヨーロッパみたいだけど、そこかしこでキラキラと光り輝いていた。
「…綺麗」「あの~…」
見とれていた私は、突然後ろから声を掛けられた。
「ひっ!誰!?」
振り返るとそこには白いウサギがいた。
「ウサギ?まさか…ね」
しかし、他に誰もいない。
「…もしかして…人間?」
白いウサギが喋った。
「「きゃあぁぁぁぁぁっ!」」
二人(一人と一羽)が同時に叫んだ。
「ウサギが喋った!」「人間がいる!」
お互い見つめ合ったまま固まった。
しはらくしてウサギが話しだした。
「…人間がどうやってここへ?」
「知らないわよ、月が急に大きくなって気が付いたらここにいたんだから…」
ウサギは思い出したようにポンッと手を叩いた。
「そうか、今日は元旦の超月だった
君は月に選ばれた『かぐや姫』だね」
「へっ?私がかぐや姫?」
私は何を言われたのか理解出来ないでいた。
そこへたくさんのウサギが集まってきた。
「この娘が今度のかぐや姫か?」
「これで月も安泰ですね」
私はあれよあれよと言う間に城らしき所へ連れていかれ『かぐや姫』として何不自由なく過ごした。
見上げた空には青い地球が浮かんでいた。
end