第176章 帰郷
元旦の朝。
夜更かししてたから初日の出は見れなかったけど、これから近くの神社に初詣に行く事にした。
地元の神社に初詣は何年ぶりだろう…。
「あけおめ!
義昭だろ?久しぶりじゃん」
神社で声を掛けられ振り返ると金髪に真っ白なスーツを着た男がいた。
「…お前……誰だっけ?」
「何だよ、忘れたのかよ!?
小中で一緒だった武だよ」
「…あの武か!?何年ぶりだ?
お前変わったなぁ」
中学では生徒会長までやった真面目な武がここまで変わっているとは思わなかった。
「十年も経てばいろいろあるさ…
お前こそ、いつ戻って来たんだ?
たしか高校はスポーツ特待生で東北に行ったんだよな」
「あぁ大学もそのまま向こうだったんだけどな…」
俺は武の様に勉強は出来なかったが、スポーツ推薦で東北の高校へ、大学も同じ様にスポーツ推薦で入れたが、二年の冬に怪我をして選手生命は断たれた。
何とか大学は卒業したが、仕事は決まらず地元に戻って来た。
「ところでお前は何で金髪にしたんだ?それにそのスーツ、違和感あり過ぎるぞ」
「そうか?俺、今ホストしてるからな」
それを聞いた俺は、あまりの衝撃に固まってしまった。
「おい、義昭!大丈夫か?」
「…ホ?ホスト!?あの真面目だったお前が!?」
「真面目なフリしてただけだよ
高校の時にそんな自分が嫌になってな…
今が一番楽しいよ」
武は屈託なく笑った。
そんな武が羨ましく、輝いて見えた。
「おっ、雪だ」
「あぁ、こっちでも降るんだな」
「なんだ?東北が懐かしいのか?」
「逆だよ、雪で滑って怪我したんだからな」
武に会ってやっと何か吹っ切れた気がした。
二人で雪を見ながら笑いあった。
end