第175章 名探偵の憂鬱なX'mas
「はははっ!さすが名探偵!
よくぞ私の正体を見破りましたね」
ラットキッド五世は真紅のマフラーをはためかせ、自慢の老舗の地下足袋に黒装束で屋根の上に飛び乗った。
舞台は先日の洋館だ。
鼠は洋館の持ち主に予告状を出していた。
『クリスマスに先日の忘年会の続きをいたしましょう
洋館の隠された財宝を頂きに参ります
あの名探偵もお呼び下さい』
早速、俺に声が掛かった。
(面倒臭せぇなぁ
そんなの警察に任せとけよ…)
俺は一応『鼠逮捕』を依頼されたので渋々、雪の降る中、洋館に向かった。
洋館にはすでに警官が集団で来ている。
まぁ依頼主が市長の祖父じゃあ当たり前か…。
玄関先で依頼主に声を掛けると、あの暖炉のあるリビングに通された。
「探偵さん、この屋敷の財宝とはなんだろうか?」
「へっ?いや…それを俺に聞かれても…」
依頼主は屋敷の財宝を知らなかった。
先日もちょっと調べてみたが、何の変哲もない旧い洋館で隠し部屋などは見つからなかった。
「この屋敷自体に価値のある物が使われてるんじゃないですか?
何か心当たりは?」
俺の問いに依頼主はハッと何かを思い出した。
「そういえば、各所に曰く付きの物を使ったとか…
例えば、この暖炉の煉瓦はナポレオンが作らせた煉瓦だとか、洗面所のタイルはアル・カポネが刑務所で作った物とか…
真偽の程は分からないのだが…」
鼠の狙いはそれか…?。
「…って、あれは何だ!」
俺が指差した窓の外には…。
「雪だるまだね」
依頼主は平然と答えた。
「いや、そうじゃなくて…
雪が降り出したばかりなのに雪だるまなんて不自然だろ!」
俺が窓を開けて叫ぶと、雪だるまが動き出した。
「はははっ!さすが名探偵!
よくぞ私の正体を見破りましたね」
ラットキッド五世は真紅のマフラーをはためかせ、自慢の老舗の地下足袋に黒装束で屋根の上に飛び乗った。
「アホかっお前は!」
周りは警官ばかり、すぐに拳銃を構え鼠を取り囲んだ。
「これで終わりだな」
俺が何かする事もない。
俺は依頼主に挨拶して早々に引き上げた。
とんだサンタクロースだったな。
結局、鼠が何を盗もうとしたのかは謎なままだが、あの包囲を突破して逃げたのだから大した奴だと思う。
おかげで報酬が無くなっちまった…。
end