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千分の一話噺

第174章 王家の秘宝 ~怪盗紳士~


深々と降り続く雪。道路も鉄道も雪に埋もれ、しばらくここから出られそうもない。
(雪深い地域だとは知っていたが、これ程降るとは…)
私はホテルの部屋から外を眺めた。この山裾のホテルから中腹にある屋敷まで行くには、この雪が止むまで無理だろう。

私は懐から拳銃を取り出し、簡単な手入れをする。今回は用心の為にと持って来たのだが、出来ればこんな物は使いたくない。
(二、三日は足止めされそうだ)
拳銃を手入れしながら、これからの事を考えた。こっちに着いて早々に雪が積もったので、まだ下見も出来ていない。

動けるようなったのは二日後だった。早速、下見に出掛けた。
屋敷は山の中腹を削り建てられていて、左右はぐるりと壁に囲まれ、後ろは切り立つ崖、出入り口は正面の門だけだ。
この屋敷の持ち主は地元の有力貴族だが、そこの息子は父親の権力を傘にやりたい放題だと言う。
その息子は毎週末にこの屋敷でパーティーを開く。忍び込むには打ってつけだ。


『オリオンの欠片』

オリオン座から零れ落ちたと伝わる旧王家の秘宝。王家の末裔である老婆から、ここの息子が言葉巧みに騙し取った。それを取り戻すのが今回の仕事だ。

客に紛れて忍び込むのは簡単だ。みんながパーティーに夢中になっているうちに宝石のある部屋を探し出した。その部屋には案の定、たくさんの美術品や宝石がある。騙し取ったり、無理矢理奪った物ばかりだ。
(さて、そろそろ警察が来る頃か…)
私はその部屋の窓から外へ小瓶をぶら下がる。警察が到着する前に外へ出て、さっきの窓に近い木陰に隠れた。

「警察だ!怪盗ファントムからの予告状が来てる!」
警官が着いたのを確認し、木陰から窓にぶら下げた小瓶を拳銃で撃ち抜く。小瓶が割れ、中の燃料が燃える。警官が何人もやって来て火を消し窓を開けた。
「なんだ!これは!?」


私はその混乱に紛れ屋敷を抜け出す。これであの貴族は終わりだろう。

晴れた夜空、瞬くオリオン座と秘宝を並べて眺めた。
「オリオン座に負けない輝きだな」



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