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千分の一話噺

第172章 以心伝心


「ほらよ、プレゼント!
って言うか、餞別ってやつだ」
そう言って渡されたのは、キャラクターが描かれたテレホンカードだった。
「何かあったら、必ず電話しろよ!」
私はそのテレホンカードを受け取ると、荷物を持って新幹線に乗った。
私が向かうのは首都東京、この春から社会人だ。

社会人になると、やる事も覚える事もたくさんあって、あっという間に時間が過ぎていく。
「おい!何で電話くれないんだ!
テレホンカードやっただろ!」
半年置きくらいに彼が訪ねて来てくれる。
正直、彼といるとホッとする。
辛い時に何度このテレホンカードを使おうかと思ったが、その度に彼の方からやって来る。
産まれた時から、楽しい時も悲しい時も、いつも一緒にいた双子だから、本当に辛い時は彼にも伝わるのかも知れない。
まるで、テレホンカードに描かれた『ピーター・パン』の様に飛んできてくれる。
「バカ兄貴…
いつも電話する前に来てるじゃん…」
本当は嬉しいのに、いつも憎まれ口しか出て来ない。
彼もそれが分かるのか苦笑いしかしない。


あれから何年経ったのか…。

今じゃあ、スマホもあるし、テレホンカードなんて必要はないけど、私のお守りになっている。



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