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千分の一話噺

第171章 夢に…


やけに太陽が眩しい。

「どうした?そんなミカンを食べ過ぎた様な黄色い顔して?」
久しぶりに会った仲間のマコトが、俺の顔を覗き込んでの一言だ。
「あん?そんな顔してるか?
まあ、昨日まで缶詰だったからな…」
俺は正直ぐったりしていた。
「缶詰?…何だ?そりゃ?」
マコトにしてみれば何の事か分からないだろう。
「締め切りまで編集部に連れてかれて拉致された…」
「ははは…ホントにそんな事するんだ?
作家様ってのも大変だな」
マコトは笑いながら俺の肩を叩いた。
「笑い事じゃねぇよ…
こんなことならデビューするんじゃなかった」
俺は泣き言を言った。
「夢が叶ったんだから、それくらい我慢しろ
夢が叶わない人の方が多いんだぜ
ラッキーだろうが、まぐれだろうが掴んだなら離すな
離したら二度目はないぜ」
言い方に棘はあるが、確かにマコトの言う通りだ。

趣味でチマチマと書いていたのを、気まぐれに携帯サイトへ投稿したら、たまたま今の編集長が目を付けてくれて、とんとん拍子に週刊誌での連載が決まった。
正に夢が叶った瞬間だった。
しかし、週刊誌の連載は毎週書き上げなければならない。
初めのうちはその緊張感も楽しめたが、三ヶ月もすると逃げ出したくなった。

それでもやっぱり離したくはない。
せっかく掴んだ夢なんだから…。

「なぁミカンが食べたいな」
「はぁ?何でミカンなんだよ」
「缶詰明けには、あの眩しい太陽がミカンに見えるんだ…」

そう、あの太陽を超えるくらいに輝く事を夢見て…。



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