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千分の一話噺

第168章 名探偵はいつも貧乏くじ③


そいつは真っ赤なマフラーを翻して窓枠に腰掛け、自己紹介を始めた。
「私はラットキッド五世…
あの地下足袋は老舗の逸品なので、お近づきの印しに差し上げますよ
ところで、何故この洋館を選んだか?分かりますか?」
「知るかよ…
何日も前から入り込んでたようだな」
「まぁ下調べとでも言っておきましょう
この街で仕事をする前に、名探偵と云われる貴方に挨拶をしておきたかっただけですから…

もうすぐクリスマスですね
私からのクリスマスプレゼントを楽しみに待っていて下さい」
そう言い残すと奴は窓から出て行った。
「ラットキッド…って、鼠小僧か…だから地下足袋?
なんか面倒臭ぇのが出てきたなぁ」
俺はとりあえず奴が出てった窓を閉め鍵を掛けた。今回の依頼は『この洋館に誰か入り込んでないか?の調査』だから、これで一応終了と言って良い。しかし奴が言っていた下調べが気になり、しばらく屋敷の中を調べてみた。
「別に金目の物は無いし、鼠は何を調べてたんだ?」
俺は首を傾げた。地下足袋は一応証拠品であるためビニール袋に入れて、洋館を後にした。

翌日、依頼主には空き巣が煙突から入り込んだと報告をして、ビニール袋に入れた地下足袋を渡した。すぐに警察を呼ぶそうだ。警察が鼠を捕まえてくれれば、俺は関わらなくても済むから助かるんだがな…。

「はっくしょん!
ちっ…、風邪引いちまったか…」
参ったな、これじゃ今回の報酬より治療費の方が高くつくぜ。俺はマフラーを巻いて足早に事務所に戻る。クリスマスに彩られた騒がしい街に…。



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