第166章 名探偵はいつも貧乏くじ①
師走に入り、街の繁華街は不景気ながらも忘年会シーズンで賑わっていた。
俺はそんな街の喧騒を背にし、郊外にある今は使われていない洋館に向かっていた。
俺も今日は忘年会なのだが、他とはちょっと違う忘年会に参加する事になった。
『拝啓、名探偵殿
私と忘年会をしようではないか
町外れの使われていない洋館で待っている』
こんな怪しい招待状に応じるつもりはなかったのだが、ある依頼が俺をそこに向かわせた。
それは今日の朝だった。
「使われていないはずの洋館に夜になると明かりが灯るから調べてくれ」
依頼主は洋館の現在の持ち主。元々は親類が建てて住んでいたが、跡取りもなく唯一の親類である依頼主が譲り受けたそうだ。
「平屋だが、叔父がこだわって造った洋館で壊すには忍びない
だが郊外で今は使ってない
不審者が入り込んだら困るので出入り口や窓は厳重に塞いである」
そんな洋館に明かりが灯り、俺の所にはその洋館で忘年会をやろうと言う招待状だ。
「…とんだ忘年会になりそうだな」
俺は洋館を一回りし戸締まりを確認した。扉も窓も開けらた形跡はない。持ち主から借りた鍵で玄関を開けて中に入った。
「さぶっ!」
すぐに電源ブレーカーを入れ明かりを点けた。家の中は冷え切っているが、暖炉以外の暖房はなかった。とは言え、まさか暖炉を焚く訳にもいかない。
「…なんだこれ?靴下か?」
その暖炉の中には地下足袋が落ちていた。否、置いてあると言った方が良さそうだ。
to be continue…