第165章 世界一
「林檎にするか?蜜柑にするか?
それが問題だ!」
彼は林檎と蜜柑を前に腕組みをして悩んでいた。
「何?、シェークスピア?」
「あん?シューエクレア?
そんなもん食いたくねぇよ」
「バッカじゃない!
シェークスピアよ、シェークスピア!」
「だから、そんなもん食いたくねぇって言ってんだろ!」
私は呆れて何も言えなかった。
(やっぱコイツあほやな)
「まあ、良いわ
それより何で悩んでんの?」
「いや、どっちを食べようかと思ってな」
「そんなん両方食べたら?」
「いっぺんに両方なんて勿体ないじゃん」
「…たかが林檎と蜜柑よ」
私が首を傾げると彼がその林檎と蜜柑を買ったいきさつを話し出した。
「近所に軒を並べて林檎屋と蜜柑屋って看板を掲げた専門店が出来てな、どっちの看板にも世界一美味いと書いてあるんだ」
「林檎と蜜柑の専門店?
そんなの聞いたことないわ…」
「…で、どっちの店主も「うちが世界一だ」って言い張って譲らないんだよ
そこで、俺が決めてやるって言って一個づつ買ってきた」
「あっそう…」
(このアホ、まんまと乗せられて買わされたな…)
「でも、普通の林檎と蜜柑にしか見えないわよ」
「この蜜柑は一個千円、林檎は八千円もするんだぞ!
普通な訳無いだろ」
「嘘!そんなに高いの!?
騙されてない?」
私は不安になってネットで調べたら、蜜柑は千円、林檎は一個数万円の物もあるらしい。
蜜柑はともかく、林檎はまだ上があるなんて…。
「蜜柑が先か?林檎が先か?
確かにこれは問題ね…」
「う~ん…」
end