第163章 名探偵と幻の逸品(前編)
今日は久しぶりに恩師の家に呼ばれた。俺は北風の寒い中、コートの衿を立てて向かった。
「寒かったろ、ココアでもどうだ?」
教授は暖かいココアを出してくれた。
「ところで君は幻のココアを知っているかね?」
教授はたまに変な事を言い出す。頭の良い人は考える事が違うって事なんだな。
「幻のココア?何です、それ?」
「ココアはカカオが原料なのは知っているだろ?
その歴史は古く紀元前千年頃からインカなどでは栽培されていたんだ
それは遺跡や壁画からも実証されていて、カカオは『神様の食べ物』として王侯貴族の贅沢な飲み物とされていたのだよ」
「はぁココアって歴史が深いんですね」
やっとカカオの説明が終わったが、幻のココアが出てこないな。これから?…か。
「インカがあったペルーには白いカカオがあってね、それが『幻のホワイトカカオ』と呼ばれてるんだよ
主なカカオの実は黄色や赤色だが、そのカカオは白い実をつける
その白いカカオのうち、中の豆まで白いのは3~4割、残りは表面は白いが豆は紫色…
ホワイトカカオの更に3~4割の白いカカオ豆は希少で市場に出回らない幻の逸品なのだ
このホワイトカカオの特徴は色だけじゃないぞ
普通のカカオは苦くて食べられないが、ホワイトカカオの豆は苦味が少なくマイルドでコクがあると言われているんだ
しかも、遺伝子を調べたら、他の品種とほとんど交配していない、古代からの遺伝子をそのまま受け継いでいるのだよ」
教授がここまでカカオに詳しいとは思わなかった。
「教授、まさかココアの話しをする為に呼んだんですか?」
「おぉすまん、ついな…」
教授は苦笑いしながら、やっと本題に入った。
to be continue