第161章 名探偵再々登場
「事件は会議室で起こってるんだ!」
今回の依頼人が、どこかで聞いた事のあるフレーズを電話の向こうで叫んでいる。
「あん?憲三か?…それは仕事の依頼と受け取って良いのか?」
電話の相手は、今では小さいながらも会社を経営している昔の悪ガキ仲間の憲三だ。
「いいから早く来い!」
憲三は勝手に怒鳴って電話を切った。
「あっ!おいっ…
ちっ切りやがった…」
人の都合も聞かず勝手な奴だ。
まぁ仕事の依頼なら仕方ない。
奴の会社は俺の事務所からチャリで10分程度、何回も来てるから社長の知り合いとして会社を勝手に歩き回れる。
会議室と書いてあるドアを開けた。
「憲三、事件って何だよ?」
「やっと来たか!
これを見てくれ」
憲三が手招きするので、行ってみると机の上に木の箱が置かれていた。
「俺の…、俺の松茸がなくった!
捜してくれ~」
憲三は今にも泣きそうな顔をしている。
「………それが事件かよ?
アホらしい、帰るぞ」
俺が踵を返すと憲三が叫んだ。
「今日中に見つけたら報酬を三倍出す!」
「なんで、松茸くらいにそこまでするんだ?」
何か訳ありかと聞けば、この松茸は社員のみんなからのプレゼントだと言った。
なるほど、仲間思いの憲三らしいな。
仕方ない、捜してやるか。
俺は状況から判断し、盗まれたのではなく社内のどこかに置いてあると考えた。
見つけるのにそう時間はかからなかった。
置きっぱなしの松茸を社員の一人が気を利かせて冷蔵庫に閉まっていたのだ。
松茸を見つけると憲三は俺に抱き着いてきた。
「名探偵~!」
「アホッ!こんくらい自分で捜せ!」
まぁ報酬三倍は勘弁してやるか…。
end