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千分の一話噺

第160章 俺とあいつ⑩・あいつの長い一日


「誕生日プレゼント、何が良い?」
久しぶりに会ったと言うのに、コイツは俺の顔を見るなりいきなりこれだ。
しかし、言われてみれば確かに来週は俺の誕生日。
ガキの頃ならいざしらず、三十路の誕生日なんて気にもならない。
言い返そうと思ったが、コイツは一度言い出したら聞きゃしない、俺はそうそうに諦めた。
「はぁ…じゃあ仕事用にネクタイくれ」
「なんだ、その投げやりな言い方は!
昔の君はもっと素直だったぞ」
痛いとこを突いてくる。
お前みたいにいつまでも自由にいられる奴なんてそうそう居ないんだよ。
仕事に追われ、自分の事は後回し、ストレスに晒された心はザラザラだ。
いろんな意味でお前が羨ましいよ。
「…そうだな…たまには誕生日も良いか…
よし!プレゼント変更だ!」
俺がそう言うとコイツはキョトンとし小首を傾げた。


誕生日当日。


俺は有給休暇を使ってコイツと松茸狩りに来た。
「今日は思いっきり楽しむぞ!
お前の奢りだからな、松茸も死ぬほど食ってやる!」
俺が嬉嬉として叫ぶと隣でコイツは苦笑いしていた。
いつもは俺が振り回されて苦笑いしてたが、今日は逆だ。
少しは俺の気持ちを分からせてやる。

俺が望んだプレゼントは『自由な一日』だ。



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