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千分の一話噺

第152章 歳の差夫婦③・葡萄狩り


「ねぇ、次の休みに葡萄狩りに行かない?
今年の葡萄は出来が良いみたいよ」
「君の興味は葡萄よりワインだろ?」
「うっ…」

さすがは私の旦那様、私の企みは全て見透かされているようだ。

九月になっても残暑は厳しいけど、風は少し秋の薫りに変わってきた。
秋の粧いに衣更え、でもまだ上着はいらないかな…。


そして、次の休みの日。
「山の天気は変わりやすいし、もう肌寒いかも知れないぞ」
「そうね、軽い上着は持って行くわ」
私達は山梨県の葡萄農園に向かった。
いい天気で汗ばむくらいだけど、たくさんの実を付けた葡萄はどれも甘くて美味しかった。
「ねっ、今年の葡萄は出来が良いでしょ」
「うん、美味いね」
お土産の葡萄も買って、いよいよワイナリーに…。

車を走らせているとだんだん雲行きが悪くなってきた。
「こりゃあ、一雨来そうだな」
旦那の言葉通り、見る見る空は鉛色に変わり大粒の雨が落ちてきた。
フロントガラスを叩く激しい雨粒で前が見えにくくなる。
コンビニを見付けて駐車場で様子を見る事にした。
「小降りになるまで待っていよう」
「ちょっと冷えてきたわね
上着持って来て良かった…」
気温が下がり肌寒いくらいだ。
旦那はスマホで天気を調べた。
「まずいな…これから大雨になるみたいだ
通行止めとかになると困るから、今日は残念だけど帰ろう」
「えぇ~ここまで着たのに?」
「最近の集中豪雨は危険だから…
葡萄狩りは出来たんだからワインはまた今度な」
「確かに通行止めで帰れないとか嫌だけど…」
私は窓から空を恨めしげに見上げた。

ワイナリーを先にすれば良かったと思ったけど、さすがに旦那には言えなかった。



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