第151章 俺とあいつ⑨・体温
世界最高気温をご存知だろうか?正式に認められている記録はアメリカのデスバレーで観測された56.7℃。
「日本は蒸し暑いけど、ジブチに比べたらまだ涼しいよね」
コイツがまた変な事を言い出した。
「ん?ジブチって何処だよ?」
俺は首を傾げた。
アフリカの小国、ジブチ共和国では最高気温71℃を記録したと言われている。(ただし記録の正確さに疑問があるため正式には認められていない。)
「ジブチって年間の平均気温が30℃もあるんだって」
「なんでお前がそんなこと知ってるんだ?」
「えへっ、去年行ってきた」
「はぁ?去年って…まさか、あの一ヶ月行方不明だった時かぁ!?」
コイツはペロッと舌を出した。
「世界で一番暑い国って興味あるもん」
「あん時みんながどれだけ心配したと思ってる!」
この時ばかりはさすがに俺もマジで怒った。
「…ゴメン…なさい」
少し縮こまった様に頭を下げた。
好奇心旺盛で天真爛漫、悪気がある訳じゃないのは分かっているが、やって良い事と悪い事はある。
「ったく!行くなら家族にくらいは行き先を言っていけ!」
「分かった…今度からは君に言ってから行く」
「ばっ!なっ、なんで俺なんだよっ!」
「だって家族みたいなもんじゃない」
コイツの満面の笑みに、頭に血が上っていた俺の体温が更に上がった。
end