第147章 アロワナ
「へっ?山に熱帯魚を運ぶ?」
社長が口にした仕事の内容に俺の頭の中は?マークがいっぱい出てきた。
「あの…よく分からないんですが?山に水族館でも作るんですか?」
普通、水族館と言えば海の側と決まっている。
俺の頭では山と熱帯魚がどうしても結び付かなかった。
都会のビルの中に水族館が出来る世の中、山に作っても不思議ではないが、なんか納得いかない気もする。
「知り合いの温泉旅館のオーナーが熱帯魚好きでな、巨大な水槽まで作ったそうだ
アロワナって熱帯魚知ってるか?それを運ぶ仕事だ
買ったペット屋では、輸送は断られたらしい」
社長は基本的に違法な依頼以外は何でも引き受ける。
通称『何でも屋』と言われるだけに、うちの仕事は変なのが多い。
まだ、現地で捕まえてこいと言わないだけマシか…。
専門業者に頼めば済む事だが、これがめちゃくちゃ高い。
とりあえず巨大な魚を運べる車を借りて、ペット屋に行きアロワナとかいう魚を引き取った。
体長は1mを超えているが、まだデカくなるそうだ。
こんな奴をこれから山の旅館まで運ぶのか…。
途中で何度も魚の様子を見ながら、時間を掛かけて何とか無事に旅館に着いた。
さすがに社長も疲れたらしく、オーナーに頼んで旅館に泊まる事になった。
温泉に浸かり、夕食にはビールとたくさんの料理が並んだ。
「刺身…まさかアロワナじゃないよな」
「社長、勘弁して下さいよ…」
俺は苦笑いでビールを飲んだ。
end