第145章 高嶺の花
今日は海の日。こう毎日、真夏日が続くと海にも入りたくなる。…と言う事で彼女とのデートは海となった。
セミロングの黒髪を束ね、純白の水着を身につけた姿が眩しい。スタイルも抜群で、すれ違う男も女も目を奪われる。
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花…か」
彼女は正に高嶺の花、どこから見ても隙のない凛とした姿は神々しくさえ思えた。
しかし、何でこんなとんでもない美人が俺の彼女になってくれたんだ?まさか俺は騙されてるのか?と何度となく考えたが答えは出ない。
彼女は摩天楼で働くエリートキャリア、俺はと言うとしがないフリーター。そんな俺を騙しても彼女には何の利益もない。それどころか、俺みたいなダメ男と一緒にいる方が、彼女にはいろいろダメージがあるはずだ。なのに彼女は言い寄るイケメンエリートに目もくれず俺を選んだ。何故かは未だに恐くて聞けないでいる。
しかし今日こそ、思い切って聞いてみよう。例えこれで彼女に嫌われたとしても仕方ない。否、この際嫌われた方が彼女の為かも知れない。
ビーチパラソルの下、彼女が横に座ると俺はアイスボックスからビールを出して渡した。ビールを受け取ると意外な言葉が返ってきた。
「ありがとう♪私達一年経ったのね
これからもずっと一緒にいようね」
「あっ…もちろん…
俺で良ければ…」
彼女の笑顔に俺は言い出せなかった。摩天楼に咲く大輪の百合の花を散らすなんて、やっぱり勿体なくて出来ない。
俺はビールを一気に飲み干し、嫌われるのはもう少し先に伸ばそうと思った。
end