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千分の一話噺

第140章 俺とあいつ⑧・喧嘩


「バカかっ!てめぇはっ!
いつまでそんなもんにしがみついてやがるっ!」
俺はつい怒鳴り付けてしまった。
しかし、あいつはそれでもスマホから目を離す事をしなかった。
「でも、これには…」
「言い訳なんざ聞きたかねぇ!」
何を言いたいかくらい、言われるまでもなく分かっているし、あいつが言いたくない事を言わせる気もない。
「………」
さすがのあいつも何も言い返せなかった。


あれから一週間が過ぎた。

俺も言い過ぎたとは思っていたが、釈然としないまま謝る事も出来ないでいた。
忙しくて会う事がなかったのは、お互いに良かったのかも知れない。
『明日、会ってくれる?』
あいつからメールが着た。
あいつの気持ちも落ち着いたのだろう。
仕事が終わり次第会う事にした。

待ち合わせ場所は子供の頃に遊んだ公園だった。
(何で今頃ここなんだ?)
田舎町の町外れにあるちょっとした丘がある公園、ここに来るのも高校生以来だ。
(そう言えば、あの時もあいつと喧嘩した後にここで仲直りしたっけな…)
そんな事を思い出しながら公園の中に入っていった。

丘の上に小さな光りが見える。
あいつのスマホだろうか?まだ気にしてんのか?
俺が近づくとあいつはスマホを俺に向けて見せた。
「どう?これで文句ないよね?」
あいつは晴れやかな笑顔を俺に見せた。
(無理しやがって…)
言葉に出さず空を見上げた。
梅雨の晴れ間は星空も美しい。
「今日は七夕だからね」
「だから、ここにしたのか…」
あいつはまだ、あの時の約束を覚えていた。


『ここで七夕の星を一緒に見上げたら何があっても仲直りする。』



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