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千分の一話噺

第138章 俺とあいつ⑦・居酒屋


「ねぇUFO見た事ある?」
こいつはいつも突然変な事を言い出す。俺は食べていたアスパラガスのサラダを吹き出しそうになった。

「…はぁ?…あるぜ、ヤキソバだろ?」
「違~う!空飛ぶ円盤の方!」
俺のボケにムキになったこいつは手でUFOの動きを見せた。
「…どうせ鳥か飛行機だろ?」
「あれは絶対!本物だよ!」
まるっきり信用してない訳じゃないが、こいつは俺を騙して楽しむ癖があるからな。
「どこで見たんだよ」
「先週、隣町に路面電車が復活したでしょ
昨日あれに乗りたくて…」

路面電車の話しになったらUFOのUの字も出て来ない。俺はサラダをつまみながら酎ハイ片手にウンウンと頷いていた。
「こらっ!ちゃんと聞いてないでしょ!」
「聞いてる聞いてる
路面電車は初めてだったんだろ?それでUFOはどこ行った?」
俺の返しに一瞬言葉を詰まらせた。
「あっ……その、路面電車から町を眺めてたら夕日の近くに出たの!」
「へぇー、夕日の近くにねぇ…」
俺はアスパラガスを摘んで口に運ぼうとした。
「あーっ!それ!」
突然叫んで俺を指差した。
「バカ!大声出すなよ、迷惑だろ!」
「ゴメン…
でもそのサラダ食べたかった…」
皿を見たらもうサラダはほとんど無くなっていた。俺は苦笑いしながら店員に同じサラダとある物を頼んだ。

「お待たせしました~」
店員がアスパラガスのサラダとヤキソバを運んできた。
「ほら、サラダとUFO!」
「むーっ!やっぱ信じてない!」
むくれながらもサラダとヤキソバを美味しそうに食べるこいつに乾杯だ。



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