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千分の一話噺

第135章 大事な服


「蒸し暑いわね…」
6月になったばかりなのに、30度になろうかと言う。衣更えには打って付けな日とも言えるが…。

地球温暖化の影響で年々気温の上昇が早い。6月になれば梅雨の声も聞こえて来るが、全体的な雨量は少なく集中豪雨が目に付く。異常気象と言うが、もうこれが日本周辺では普通になってきていると言っていい。

「衣更えついでに要らない服も処分しちゃいましょ」
妻が箪笥を前に腕まくりをしている。どうやら私の服も対象になるようだ。服にこだわりがあるわけでもないし、妻が全部選んでくたれた服ばかりで何も言う必要もなかった。
「ゴミ袋、持って来るよ」
戻って来ると、早くも仕分けを始めていた。引き出しから次々と服が出されていく。
「ん~、これはまだ大丈夫ね
…これはもう要らないわ」
手際が良いと言うか、執着心がないと言うか、ぱっぱと仕分ける姿は気持ち良いくらいだ。

要らないと言った服をゴミ袋に詰めていく。妻の服はまだ十分に着れそうだと思う。
「なぁ、これリサイクルにでも持っていくか?
ちょっと勿体ないだろ」
「そうね、流行りじゃないけど物は良いから…」
特に程度の良い服はリサイクルに回す事にした。そんな中に気になる服が目に付いた。
「おい、これは捨てるなよ」
「え?だってもう着ないでしょ」
「これは父の日に理恵から貰ったやつだぞ」
「あっ…そうだっけ…
じゃあ、とっときましょうね」
まったく、仕分けに夢中で大事な服まで捨てられる所だった。
まぁ、赤いスカジャンなんか、もう着れる歳じゃないけど…。



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