第130章 RedRose
入社して一ヶ月が過ぎ、ゴールデンウイークも明けると、五月病となる新入社員も出てくる。環境が変わり、心身の疲れから精神的に病んでしまう。そんな時期だからこそ…。
「よし、次行くぞ」
先輩は一人でさっさと行ってしまった。私は慌てて後を追い掛ける。
「先輩待って下さ~い」
電車に乗って座席で溜め息が出た。
「はぁ…」
「なんだ?五月病か?」
先輩は笑いながら聞いてきた。私は首を横に振った。
「そんなんじゃないですよ
やる気はあるんですけど、なんか上手くいかないって言うか…」
「それも五月病だ
なにもやる気がなくなるだけが五月病じゃない
うちみたいな小さな会社は入社してすぐに配属される
一ヶ月で自分のやることも分かってきてやる気は出るけど、仕事がそんな簡単に上手くいく訳無いだろ?
焦ってミスるより、ゆっくりでも確実にやってくれる方がこっちも助かる」
私は先輩の言葉を黙って聞いていた。見透かされているようで恥ずかしくて下を向いてしまった。
「…偉そうに言ったが、俺も新入社員の時に先輩にそう言われた
仕事が上手くいかないなんて十年早いってな」
先輩は苦笑いで頭を掻いた。
先輩の言葉に私は気が楽になり、肩の力が抜けた。先輩にはお礼も兼ねて、今人気のレストラン『RedRose』に誘った。先輩が花言葉なんて知らないと思うけど、焦らず確実にを実践している。
end