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千分の一話噺

第129章 ゲーマー


あれは桜が満開の頃だった。


駅へ向かう途中の公園には桜並木とその奥に大桜がある。毎年春には見事な花を咲かせる。今年も満開を迎えた。日曜日と言うこともあり、花見をしてる人達もいる。
「花見か…」
俺はあの花見の日を思い出した。


あの日、俺は会社の花見に参加していた。こういう宴会は苦手で参加したくなかったが、同期に無理矢理引っ張り出されたのだ。
(…ったく、何で俺が……ん?)
「あ、あの…どうぞ…」
目の前に缶ビールが差し出された。見れば見覚えはあるが、名前も知らない別の部署の娘だった。
「あ…ありがとう」
とりあえず乾杯をした後、俺は少し離れたベンチに腰掛けた。そこへ俺を誘った同期と、さっきの娘がやって来た。
「こんなとこで何やってんだよ」
「あん?あぁゲームだよ」
俺はスマホの画面を見せた。
「お前、花見に来たのにゲームかよ!?」
同期は呆れていたが、隣にいた娘は自分のスマホを操作しだした。そして同じゲームの画面を出した。
「私もコレやってます!」



あの日から、俺達は付き合う事になった。俺を花見に誘った同期の奴は、俺と彼女をくっつけさせる為に誘ったそうだ。しかし、同じゲームをやっているとは思わなかったと言っていた。それは俺も同じだ。

まさか、花見から逃げるために始めたゲームをしてたとは…。



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