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千分の一話噺

第120章 勘違い


「よっしゃ!今日乗り切れば春休みだっ!」
春休み?また先輩が良からぬ事を思い付いた様だ。
(君子危うきに近寄らず…)
俺は先輩に気付かれない様にこそっと席を離れた。

「はぁ…こんどは何思い付いたんだ?」
俺は自販機の前で溜め息をついた。
「よっ、こんな所で油売ってて良いのか?」
他の部署にいる同期が声を掛けてきた。
「…先輩が変な事を考えてるみたいだから逃げてきたんだよ」
俺は自販機でコーヒーを買って一口飲んだ。
「またかよ、今度は何するんだ?」
同期は興味津々だ。
先輩の事は社内でも有名で、その下にいる俺まで仲間に見られている。
「知らねぇよ!
言っておくが俺は被害者だぞ」
「そうか?お前結構楽しそうに見えるぜ」
同期の言ってる事は半分正解だ。

いつも変わらないつまらない日常を先輩が何かする度に非日常に変えてくれる。
しかし、そのほとんどが俺にも被害が出る。
端から見ているだけなら楽しいが、巻き添えになる身にもなってくれ。

「おっ、ここにいたのか?
会社終わったらちょっと手貸せ!」
「せ、先輩…」
(しまった見つかった)
隣にいた同期はそそくさと逃げて行きやがった。
「なんですか?変な事ならやりませんよ」
「バァロー、俺がいつ変な事した?」
「…いつもでしょ」
自覚がないのがこの人の凄い所だ。

退社後、先輩に連れて来られたのは幼稚園だった。
「息子の幼稚園は明日から春休みでな、今日はみんなでバーベキューをするんだよ」
「えっ?幼稚園のイベントに俺が参加して良いんすか?」
「近隣の人達も自由に参加するからお前一人くらい大丈夫だ!
その代わり手伝えよ」
そう言って先輩は率先して料理を作り始めた。
今回は俺の勘違いだったようだ。



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