第117章 メニュー
明日は卒業式なんだよな…。
俺は校舎を見上げ溜め息をついた。
「おい、早く行かないと日替わり定食なくなるぞ」
徳永に背中を叩かれた。
「分かってるよ」
俺達は学食へ急いだ。
うちの学生食堂は一般にも解放されていて、地元では大人気の食堂になっている。
そのため、お得な日替わり定食は無くなるのが早い。
今日も行列が出来ていた。
「日替わりまだある?」
食堂に入ると徳永が食堂のおばちゃんに聞いた。
「まだあるよ」
間に合ったようだ。
『春告げ魚の塩焼き』
今日の日替わりメニューだ。
そういえば、毎年三月になるとこの『春告げ魚』がメニューに出てくる。
今まで特に気にすることなく食べてたけど、どんな魚なんだろう?
「なぁこの魚ってなんだ?」
徳永に聞いてみた。
「あん?春告げ魚だろ?」
「あのなあ…」
駄目だこりゃ…、こいつに聞いた俺が馬鹿だった。
食べ終わってから食堂のおばちゃんに聞いてみた。
「これはメバルよ
春先の今頃によく捕れるから、春告げ魚って呼ばれてるの」
「そうなんだ
あれ?でもメバルの煮付けとかあるじゃん」
「三月だけは卒業生の為に『春告げ魚』にしてるのよ
春を告げる魚なんて縁起良いでしょ」
おばちゃんはにこやかに答えてくれた。
その気持ちがなんか嬉しかった。
end