第116章 ドッグラン
(うぅ寒い…
こんな時はアレだな)
俺はご主人様に駆け寄った。
「ワン!ワン!」
(散歩しようぜ!)
「なんだ?もう散歩の時間か?」
リードを付けられるのは仕方ないが、外を走り回れるんだから我慢しないとな。
「おい、あんまり引っ張るなよ」
「ワン!」
(走るぜ!)
勢いよくダッシュしようとしたらリードを引っ張られた。
「危ないっ!」
目の前を車が走り過ぎて行った。
「ク~ン…」
(ビビった…)
家の前の道が交通量の多い街道なのを忘れてた。
「…お前はなんで覚えないんだ?
公園に着くまで我慢しろ」
ご主人様は苦笑いだ。
そんな事言われてもダッシュしたいこの熱い気持ちは止められないぜ。
(しかし、車って奴はあんなにデカいのに、なんであんなに速いんだ?)
気を取り直し、俺はご主人様を引っ張りながらいつもの公園を目指した。
もちろん途中のマーキングも忘れない。
(あの電柱って奴は最高だぜ)
公園に着くと、ちょっと良い香りがする。
見上げると梅の花が咲いている。
「もう満開なんだ…、綺麗だなぁ」
ご主人様も立ち止まって見上げている。
「ワン、ワン」
(そんな事より早く行こうぜ)
「分かった、分かった」
この公園の奥には『ドッグラン』っていう、リードを付けないで走り回れる場所がある。
「ワン!」
(今日は梅の香りで気分が良いから、あの車って奴より速く走れる気がするぜ!)
end