第114章 少女
雪のかまくらに憧れて、電車を乗り継ぎ、バスに揺られ豪雪地域にやって来た。
一面の銀世界、ここならかまくらくらい余裕で作れる。
俺は早速かまくら作りに取り掛かった。
家から持ってきたスコップで雪を集めていると、声を掛けられた。
「こんなに雪集めてどうするの?」
白いフードを被った少女が俺を見ている。
「かまくら作るんだよ」
ちょっと首を傾げた少女。
「私にも『雪うさぎ』作って」
「雪うさぎ?なんだそれ?」
「雪で作ったうさぎよ
目はナンテンの実、耳はユズリハの葉をつけるの」
「それくらいすぐ出来るぜ」
と答えた後に、俺はふと思った。
(待てよ、こんな銀世界にナンテンの実にユズリハの葉っぱなんてあるのか?)
「大丈夫、ここにあるから…」
少女はポケットからナンテンの実とユズリハの葉っぱを出した。
まるで俺の心を読む様に…。
「…おぉ、じゃあ作るか」
俺は雪でうさぎの形を作くると、少女から渡されたナンテンの実とユズリハの葉っぱを飾り付けた。
「出来た!」
我ながら良い出来だ。
すると少女は何やらブツブツと呟きだした。
「…ワレニシタガエ」
呟き終わると雪うさぎが動き出した。
雪うさぎは俺と少女の周りをピョンピョンと飛び跳ねている。
「…えっ…き、君は?」
俺が問い掛けると少女はにっこり笑った。
「お礼にかまくら作ってあげる」
少女は手を振り上げ、またブツブツと呟くと、みるみるうちに雪が集まり、立派なかまくら出来上がった。
「おぉ!かまくらだぁ!」
俺は喜んで少女に振り向くと、そこには少女も雪うさぎもいなかった。
ただ、雪の上に「ありがとう」と書かれてあった。
end