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千分の一話噺

第112章 東京のバスガール


私宛てに日本からエアメールが届いた。
差出人はあの時私が助けたバスガールからだった。


あれは半年前、仕事で日本に行っていた時の事だ。


「コノバス、日本橋イキマスカ?」
私はバスの女性車掌に行き先を尋ねた。
「えっ?はい、行きますよ
…日本語お上手なんですね」
「スコシ…デスガ」
私の拙い日本語でも通じるようだ。

バスで日本橋に向かっていると、途中のバス停で怪しい男が駆け込んできた。
「早く出せ!」
男は刃物を女性車掌に突き付け、運転手にバスを出すよう命じた。
居合わせた数人の乗客は悲鳴あげ、男から遠ざかろうとバスの後ろに逃げた。

「Hey!You!」
私が叫ぶと男は刃物を私に向けた。
私は持っていたステッキで男の手から刃物を叩き落とし、腕を捻り上げ取り押さえた。
バスが止まると直ぐに警官がやって来て、男が銀行強盗だった事が分かった。

「ありがとうございました」
助けた女性車掌に御礼をしたいと言われたが、礼には及ばないと丁重に断った。
それでも何か贈りたいので住所を教えてくれと…。
彼女には警官との通訳代わりをしてもらったので、その御礼代わりに住所を書いて渡した。



彼女からの手紙には、あの時の御礼が丁寧に綴られていた。
彼女には感謝している。
あの時、警察署に連れて行かれたら私も逮捕されていたかも知れない。
国際指名手配されているのだから…。


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