第109章 ツェッペリン
「これが世界最大の飛行船グラーフ・ツェッペリン号か…」
年末に何故か俺宛てにツェッペリン号への招待状が届いた。
伯爵の数少ない知人って事だからだろう。
世界一周を終えたツェッペリン号を記念して、年明けに船上でダンスパーティが行われるそうだ。
目の前にしたツェッペリン号はとにかくデカい。
こんな巨大な船体が宙に浮いている事が不思議でならない。
「伯爵もとんでもない代物を造ったもんだな
一緒に世界一周したかっただろうに…」
この飛行船の基本を設計したツェッペリン伯爵はいつも俺に「これからの空は飛行船だ」と言っていた。
あの時、この飛行船が世界一周すると思っていたのだろうか?そんな事を思い出しながらツェッペリン号に乗り込んだ。
乗り込んでいる招待客はタキシードやドレスを着飾った紳士淑女ばかりで肩がこりそうだ。
パーティまでまだ時間があるので客室で休憩することにした。
客室は海の豪華客船の様な豪華さはないが、ベッドと洗面台は付いている。
重さを考慮して簡素な客室になっているのだろうが、やっぱり俺にはこれが空を飛ぶとは思えない。
「伯爵が生きていれば…」
俺はベッドに横になって時間まで寝ることにした。
「おい!起きろ!」
俺は船員に荒々しく起こされた。
「ん?パーティの時間か?」
俺はその船員に尋ねた。
「何呑気な事を言ってるっ!
ヒンデンブルグ号が火事だ!すぐに避難口に行け!」
火事?俺はすぐに船室を飛び出た。
乗客は悲鳴をあげながら逃げ回っている。
船内には煙りが漂い、遂に爆発が起こった。
「うわぁ!」
俺はベッドから飛び起きた。
「…夢?」
俺は腕時計で時間を確認した。
「…そろそろパーティの時間か」
会場に行くとダンスパーティが始まる前に新造船「ヒンデンブルグ号」の就航が発表された。
end