第107章 歳の差夫婦①・鏡開き
一月七日、正月気分もすっかり抜けていたが、夫が出掛けようと言い出した。
土曜日と言うこともあり近くの神社では鏡開きの催しがあるらしい。
夫と二人で神社に向かう途中に綺麗な花が咲いていた。
「えっ?これって牡丹?」
「あぁ寒牡丹だよ
牡丹の中には冬にも咲く二期咲きがあるんだ」
私はその時初めて寒牡丹を見た。
去年結婚してこの町に来るまでは都会の実家暮らしだった
近くには花が咲くような場所もなく、自然の多いこの町が結構気に入っている。
「ねぇ、何で今日が鏡開きなの?
あれって十一日じゃなかった?」
私の記憶では七日は七草粥で、鏡餅を食べたのは十一日だった。
「鏡開きは地域でまちまちみたいだよ
関西は十五日が多いみたいだし、京都だけは四日らしい
この辺りは七日なんだ」
「へぇ~どこも一緒じゃないんだね」
私は行事にはあまり関心がないので、何となく返事を返した。
神社では割った鏡餅をお汁粉に入れて振る舞われていた。
お参りを済ませてからお汁粉を頂いた。
「昔はこれが楽しみだったんだよなぁ」
夫は子供の頃を思い出しているようだ。
私もその懐かしい味に心がホッとした。
「せっかくだからおみくじも引いてこうよ」
夫は末吉で私は大吉だった。
「二人合わせて中吉って感じかな」
夫はそんな事を言いながら苦笑いした。
たしかに日々を普通に過ごせる普通の幸せがあれば、それで良いのかもね。
end