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千分の一話噺

第105章 福袋に賭ける意気込み


「明けましてっ!おぉめでとうぅございますぅーっ!」
今年はやたらと気合いが入った獅子舞が町内を回っていた。

最近はどこも獅子舞なんてやらなくなったのに、うちの町内は毎年やってくれる。

小さい頃は頭に噛み付いく意味が分からず逃げ回ってた。
まさかトラウマになる奴はいないだろうが、結構強烈な印象を与えてくれる。

しかし、獅子舞には魔除けだったり、「噛み付く」から神が付くと云われたりする縁起物。
意味が分かれば進んで噛まれるけど、子供の頃じゃ分かるはずもなく…。


去年までは眺めてただけだが、今年は我が子がいる。
しかも何故か妻が妙に張り切っている。
「ちゃんと噛んでもらって、運を良くしないとっ!」
「何をそんなにムキになってんだ?」
俺が首を傾げている間に、獅子舞は隣の家まで来ていた。
次はうちの番だ。

息子は異様な気配を察知したのか、さっきからぐずりだしている。
妻がなんとかあやしながら獅子舞が来るのを待っている。

「おめでとうございますぅーっ!」
うちの番になった。
獅子頭が舞って、息子の頭に噛み付いた。
案の定、息子は大泣きしているが、妻はお構いなく自分も頭を出している。
「ほら、あなたも!」
何故か俺まで頭を噛まれた。
「これで大丈夫!」
妻は満足げ頷いた。


この後、妻にデパートへ連れていかれるのであった。



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