第103章 クリスマス
西暦22XX年、今年のクリスマスは特に暑い。
クリスマスイヴ。
東京では朝から気温は30度を軽く超えていた。
「クリスマスなのにどうする?」
俺は文子(妻)に肩をすぼめて見せた。
「これから更に暑くなるみたいよ」
文子は苦笑いだ。
「じゃあ、ホワイトクリスマスにしちゃう?」
俺は文子に親指を立てて見せた。
22世紀に入ると地球の気温上昇は留まる事を知らず、日本の四季はなくなり熱帯地域に分類された。
そんな中、22世紀末に開発されたのが個人邸宅用天候ドームだ。
これは家をまるごとドームで覆い、中の天候を自由に変える事が出来る。
深夜、日付が変わる頃にはしっかりと雪が積もり、クリスマスの電飾が反射してキラキラと彩られていた。
「やっぱりクリスマスには雪よね」
文子は外に出て、深々と降る雪を見上げて呟いた。
「いつまでも外にいると風邪引くぞ
こたつもあるし、柚子茶も入れたから家の中で雪見しないか?」
俺はリビングから文子に呼びかけた。
「もう少し…こうしていたい…」
雪の中を軽やかに舞うような仕草を見せる文子に見とれていた。
「祐司さんも外に出てきて、一緒にどう?」
そう言って雪を手に取って投げてきた。
「やったなぁ~」
俺も外に飛び出し、二人で雪を楽しんだ。
「「メリークリスマス!」」
日付が変わり、俺達はシャンパンで乾杯した。
「文子、誕生日おめでとう」
俺は文子にプレゼントを渡した。
「うわぁありがとう
素敵なネックレスね」
文子は早速身につけた。
「良く似合ってるよ」
俺の見立ては間違いなかったようだ。
「ウフッ…私からのプレゼントはこれ…」
そう言って文子は俺の手を取り自分のお腹に当てた。
「これって…赤ちゃん…か?」
文子は黙って頷いた。
俺は静かに文子を抱きしめた。
end