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千分の一話噺

第99章 罠


「もう忘年会の季節か…
これから毎週末、飲み会だなぁ」
先輩の顔の締まりがなくなった。

そう、先輩は大の酒好き、社内一の飲ん兵衛だ。
「先輩!仕事が先ですよ!」
「あん?この時期、仕事なんかやってられるかっ!」
そう言い放った先輩は、すぐに課長に呼ばれて説教された。
(やれやれ、しばらくこんな調子か…)

戻ってきた先輩はえらく落ち込んでいた。
「はぁぁぁぁ…」
世界の終わりのような溜め息。
「どうしたんすか?」
「課長がよぅ…トイレの大掃除やれって…お前と…」
先輩は小声ながら俺を指差して言った。
「えっ?俺?
いやいや、俺関係ないっすよっ!」
(まずい、これは絶対逃げないと!)
「お前と一緒にやれと言われたんだ…」
先輩はなんとしても俺を巻き込むつもりだ。
「いくら先輩でも、そんな出任せ無駄ですよ!」
「出任せじゃねぇよ…
そろそろ来るぜ…」
「来ませんよっ!!」
俺は苛立って声を荒げた。


次の瞬間、肩を叩かれた。
「お前もトイレ掃除だ」
課長だった。
「えっ!…あっ!先輩!謀ったんすかっ!」
先輩はニヤリと笑っていた。
(だから小声だったのかぁ!)
すっかり先輩の罠にはまってしまった自分が情けない。

「なんで俺までトイレ掃除だぁぁぁ!!!!」



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