第98章 クリスマスパーティー
「クリスマスは家でパーティーするから、逃げずに絶対来るのよっ!」
彼女の目が完全に据わっている。
いつもはなんだかんだと彼女の家(実家)に行くのを逃げ回っていたが、さすがに今度は覚悟を決めなくてはならないようだ。
「わ、分かってるよ
そんな怖い顔すんなって…」
とは言ったものの、逃げ回ってた手前、彼女へのプレゼントはもちろん、手ぶらで行くってわけには行かないよな。
俺は苦笑いで頭を掻いた。
そしてクリスマスイヴ。
「いらっしゃい
よく逃げずに来たわね」
彼女の言葉とは裏腹の笑顔が眩しかった。
家に上がって、彼女の両親を紹介された。
「これ、俺…いや、うちの田舎の名産なんで良かったら…」
俺は持ってきた荷物を差し出した。
「田舎って高知だっけ?」
彼女はそう言いながら荷物を開けた。
その瞬間に広がる爽やかな香り。
「わぁ良い香り!」
彼女も両親もその香りに酔っていた。
「柚子ね」
母親が呟いた。
「はい、高知は柚子の生産量日本一なんですよ」
実家から送ってもらった柚子と柚子を使った品々は、彼女にも両親にも気に入ってもらえたようだ。
「で、私のプレゼントは?」
「あっ…」
彼女の笑顔はここまでだった。
end