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千分の一話噺

第97章 怪盗紳士


冷たい風を背に受け、私はコートの衿を立て、仄暗い倉庫街を進んだ。

「八番倉庫か…」

夜の倉庫街は人影もない。
それでも俺は周囲に気を配り、足早に先を急ぐ。
街のざわめきが遠くになっていく。

「…ここか?」

『No.8』と書かれた倉庫の前で足を止めた。
辺りを見回し素早く裏手に回る。

(さて、何処から入るかな?)

外観から倉庫の造りを把握する。
表はシャッター、上の窓はただの明かり取りで嵌め殺し、手の届く窓は全て鉄格子に二重ロック、裏手の出入り口は警備員付き。

(決まったな)

私は躊躇なく裏手の出入り口に近づいた。
警備員は二人、銃も所持している。

「あっ!社長!
こんな時間にどうされましたか?」
「…中に忘れ物をしてしまったらしい
慌て来たからここの鍵も忘れてしまって…ちょっと開けてくれないか?」

こんな事もあるかと、ここを借りてる社長に変装してきて正解だった。
中に入ったら、ビニール袋に入れた睡眠薬を染み込ませたハンカチを出し、まずは警備室にいる警備員を呼び出す。
「君、ちょっと手を貸してくれ」
素早く警備員の後ろに回り、そのハンカチで眠らせる。
「おい!大丈夫か?」
声を荒げて、外にいる警備員を呼び込む。
「どうしました!」
飛び込んできた警備員を同じように眠らせた。

仕事は手早く正確に。

倉庫の中に入ったらすぐに目的のお宝を探す。

この倉庫はとある貴金属店が契約してるので、他にも宝石は山ほどある。
が、私が狙うのは「マリアの泪」と言われるブルーダイヤだ。
倉庫の中にある大型金庫に目を着ける。
大型だがダイヤルと鍵のシンプルな金庫、こんな金庫を開けるのに三分もいらない。

(…これか)

ブルーダイヤと言っても差ほど大きくもない。
だが、このダイヤは宝石としての価値よりもっと重要な価値がある。




翌日、とある教会。
「おぉ、神よ
マリアの泪が…」
盗まれていたブルーダイヤのネックレスが、マリア像の首に掛けられていた。
『MerryChristmas』のカードと共に…。



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