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千分の一話噺

第95章 名探偵登場


俺はこの街で探偵をしている。
この街の事なら何でも俺に聞きな。


今日の依頼は犬捜しか…。

実際、日本ではテレビや映画のように探偵が刑事事件の捜査に加わるなんて有り得ない事。
大概は浮気調査や人捜しなど地味な仕事ばかりだ。

犬や猫の捜索も探偵には大事な仕事の一つ。
わざわざ探偵に依頼するくらいだから、クライアントが金持ちなのは火を見るより明らか。
見つけ出せば成功報酬がたんまり貰える美味しい仕事なのだ。

しかし、これがなかなか上手くいかない。
特に犬は帰巣本能があるから早く見つけないと勝手に帰って来て依頼がキャンセルなんて事はよくある。
時間が勝負だ。

クライアントにいなくなった状況や時間帯を詳しく聞いて、周辺をくまなく聞き込みし、目撃情報を得る。
その情報からターゲットの足取りを辿って行く。
時には保健所や動物病院等も見て回る。

早速、近所の聞き込みで有力な情報を得た。
近くの空き家で見掛けたそうだ。

俺はちょっと焦った。
(まずいな、早くしないと自分で帰っちまうぞ…
そうなったら報酬がパァだ)
とにかくその空き家に走る。

「ロバート!」
俺は犬の名前を叫んでみた。
すると空き家のはずの家の中で物音がした。
(ん?何かいる…)
俺が家の裏手に回ると窓から男が出て来た。
「そこで何してる!」
俺の言葉に逃げ出した男を取り押さえた。
「おや?どこかで見た顔だな
あんた、手配されてるだろ?」
正に棚から牡丹餅。
すぐに警察に連絡し手配犯を引き渡したが、なんやかんやで夜まで警察署で事情を説明する羽目に…。
「やっと解放されたか…」
自販機で買った缶コーヒーを開けた瞬間、携帯が鳴った。

ロバートが帰ってきたので、捜索はキャンセル。
「あぁ…骨折り損のくたびれ儲けか…」
この時の缶コーヒーの苦さは心に凍みた。



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