第89章 駆けっこ
「位置に着いて…
よぉぉぉぉぉい!どおぉぉん!!」
スターターの号令と共に五人のランナーは一斉にスタートした。
ロケットスタートを決めたのは、2コースのイケメン。
「ふっ、僕の華麗なスタートに着いて来れるかな?」
余裕の笑みを観客に振り撒きながらスタンド前を駆けて行った。
しかし、コース半ばでスタミナが切れズルズルと後退して行った。
次にトップに立ったのは、4コースの小柄な選手。
何故か無花果を食べながら走っている。
「不老長寿の果物、無花果パワーは無敵だぁ!」
彼は運営の人に連れて行かれた。
場内騒然とする中、トップに出たのは、1コースのヒョロッとした選手。
長い手足を思いっ切り振りながら快走していた。
「うっ…む、向かい風…」
コーナーを回って風向きが変わり失速した。
最後に競り合ったのが、3コースと5コースの選手。
「うおぉぉぉっ!俺は負けない!」
気迫で走る3コースの選手がラストスパート。
しかし、余りに力を入れすぎたためか、腕に着けていたオパール(パワーストーン)のブレスレットが切れて、その石に足を取られゴール寸前で転倒。
大波乱の駆けっこは、淡々と走った何の特徴もない5コースの選手が優勝した。
優勝選手のコメント。
「駆けっこも人生も一緒だね」
end