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千分の一話噺

第87章 百姓


「バカヤロー!ちんたらしてたら今日中に終わんねぇぞ!」
穏やかな秋晴れ、黄金色に輝く田圃(たんぼ)に親父の怒号が響く。

刈り入れ時はとにかく忙しい。
昔と違い最近の農業はトラクターやコンバインなど機械化された農機具で格段に効率が良くなったとは言え、この広大な田圃を今日中に刈り取らなくてはならない。
刈り取った後にもやることがあるからだ。

田圃は水抜きを終えて、からからに乾燥している。
この状態でコンバインを使い稲から籾だけを収穫するのだ。
収穫した籾はそのままだと水分を多く含んでいるので、長期保存するために乾燥を行う。
昔は掛け干ししていたが、現在は大きな乾燥機を使う。
乾燥したあとは籾摺り機で籾殻を取り除き、玄米の状態で袋に詰めて出荷する。

これで今年の稲作は終わった。
親父に怒鳴られながら、台風や長雨に苦労した一年だったが無事に収穫出来たのは素直に嬉しい。


これが俺の作った新米…。
脱サラして親父に頭を下げて、一から稲作に向き合った結果だ。

「新米百姓が作った米にしちゃ美味いじゃないか」
親父が、お袋が俺の米を食べて笑っている。



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