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千分の一話噺

第85章 誰が為に雨は降る


「なんて日だっ!」

とお笑いの一フレーズを叫びたくなるくらい、目まぐるしい忙しさの中、ふと窓の外を見ると土砂降りの雨だった。
「ゲリラ豪雨かよっ!
今日は晴れだって言ってたじゃん!傘ねぇぞ!」
誰に対してではなく一人ツッコミをしていた。
帰りまでに止むのか気にしながら残りの仕事を片付ける。

バタバタの中、なんとか定時で終わらせて会社を出たら、さっきのゲリラ豪雨はどこへやら…。
「うわぁ、蒸し暑っ…」
雨で気温は少し下がったようだが代わりに湿気は大幅アップ、まるで空気が身体に纏わり付くようだ。

しかし、顔を上げて西の空を見てみれば、茜色に染まる夕焼け。
道端には雨粒の宝石を纏った名前も知らない花がキラキラと輝いている。
その光景は、仕事の疲れもいっぺんに吹き飛ぶくらいに綺麗だ。

上々の気分で、途中の買い物もちょっと奮発して、アパートに帰ってみれば、あまりの忙しさに忘れていたことが…。


天気予報で晴れると言っていたから外に出していた洗濯物…、換気の為に10㎝程度の隙間を開けていた窓…。

「なんて日だっ!」

びしょ濡れの洗濯物を洗濯機へ放り込み、水浸しの部屋を雑巾掛けして、目の回るくらい忙しい夜だった。



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