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千分の一話噺

第83章 ターゲット


俺のコードネームは『曼珠沙華』
毒を持ち死人花(しびとばな)とも呼ばれ、真っ直ぐ天に向かって伸びる深紅の華だ。
忌み嫌われる華の名が、コードネームとは俺らしい。


携帯にメールだ。
今日の任務依頼だな。
なんでスマホじゃないのかって?
決まっているだろう、スマホは遠隔操作の危険がある。
携帯の方が安全なのさ。
秘密厳守はビジネスの基本だぜ。

「曼珠沙華!緊急の依頼だ
すぐに現場に急行してくれ
指示は追って連絡する」
珍しくボスが焦っている。
まぁ、この時期に特別な任務となればボスと言えど慌てるか…。

俺はすぐにメールに添付された地図で現場に向かった。

しかし、いつも思うがこの時期に黒服って言うのはきついな。
おっ、ボスからのメールだ。
「今回のターゲットは現総理大臣だ
分かっていると思うが、いつもより慎重に任務を遂行してくれ」
なるほど、ボスが慌てるはずだ。
ターゲットがこんな大物だとは思わなかったぜ。
だが、俺に掛かればちょろいもんさ。

車から幾つか道具を下ろす。
今日はこれとこれも使いそうだ。
準備万端で現場に向かう。

誰かとすれ違う時は顔を伏せて、ターゲットの位置を確認しながら近づく。

目の前だ。

俺は一礼してから、しゃがみ込み手を合わせる。

「お墓の掃除させて頂きます」

総理大臣だから忙しいのは分かるけど、お彼岸くらい親類に頼めばいいのに…。
俺達みたいな代行業者に墓掃除させるなんて、先祖も草葉の陰で泣いてるぜ。



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