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千分の一話噺

第81章 帰郷


今年のお盆休みは彼の故郷へ来ている。
人里離れた山の中の集落。
電気は来てるが夜になれば、本当に真っ暗で怖いくらい。

自然の中での生活は、都会育ちの私にはちょっと不便に思えた。
でも、街中は猛暑だと言うのにここは扇風機だけで十分過ごせる涼しさ。
「山の中だから涼しいのね
ちょっと不便な所だけど…」
私は苦笑いした。
「こんな所でも故郷だからな
それにここは特別なんだよ」
私は彼の言った特別の意味を深く考えず聞き流していた。


それは二日目の夜だった。


「なぁ“星月夜”って知ってるか?」
彼が不意に聞いてきた。
「ほし…づくよ?
えっ?なにそれ?」
私は首を傾げた。
「今夜みたいに晴れて星明かりが月明かりの様に明るい夜の事だよ」
彼は空を見上げ答えた。


正に満天の星空。
星明かりがこんなに明るいとは思わなかった。


星空を見上げながら彼が呟いきだした。
「今宵星降る夜、我が呪われし血の宿命に従い…ここに生贄を捧げる」
私には彼の言葉の意味が分からなかった。
「何言ってるの…」
横にいるはずの彼を見ると、星明かりに浮かび上がったのは…。



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