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千分の一話噺

第805章 ブルームーンよ、永遠に…


彼女とのデートの帰り道、夜空に浮かぶ満月を眺めていた。
「…ねぇ、今月末はブルームーンでしょ?
一緒に見ようよ」
ブルームーン、一月に二回ある満月の二回目をこう呼ぶ。
「あぁ、もちろん…」
月齢は約30日、月始めに満月だと月末にまた満月になる。
二年半くらいの周期で回ってくる。
「また、こうやってデートの帰り道に見上げられれば良いな」
「うん、約束ね」
満月の光を浴びた彼女の淡い笑顔が寂しく見えた。

彼女との約束がまた一つ増えた。
映画、美術館、海、山、紅葉、温泉、来年の桜…。
たぶんもう約束が果たされる事はないだろう。
彼女は脳組織がスポンジ状になる難病プリオン病を患っていた。
患者数は百万人に一人と言われ薬も治療法もない。
俺と知り合った時にはまだアルバイトで仕事をしていたが、すぐに入退院を繰り返すようになった。

今日のデートも外泊許可が下りたから出来たのだ。
「…早く帰らないと家族が心配するよ」
「まだ時間はあるわ
少し遠回りして帰りましょ…」
もっと彼女と一緒にいたいと思う反面、俺より家族との時間を大事にしてほしいとも思う。
「…じゃあ、ちょっと寄り道しようか」
コンビニによって缶ビールを買って近くの公園に寄った。



「…ごめんね」
「何が?」
「約束、守れそうもないの…」
「…そうか」




5月だと言うのに夏日になった日の二回目の満月『ブルームーン』、月はいつものように黄色く輝いている。
しかし、一人見上げた月は青く見えた。


end

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