第790章 スニーカーの夜
新しいスニーカーで散歩に出た。
靴を買う時に試着はするが、実際に履いてある程度歩かないと足に合うかどうかは分からない。
サイズもミリ単位で誤差はあるし、甲の高さや爪先の幅もまちまち…。
「…ん、多少の違和感はあるけど、これくらいなら馴染めば問題ないか…」
とりあえずいつものカフェに足を向けた。
30分程度の距離、歩き具合を確かめるにはちょうどいい。
「…ふう、重さも固さもちょうど良いな」
カフェまで歩いて何も問題がなかった。
「いらっしゃいませ
…今日は早いのね」
「新しい靴の履き心地を確かめるためにね…」
「そうなの?」
この店員は俺の彼女だ。
いつもは夜に散歩し閉店時間に来てデートとなるのだが、今日はまだ夕方だ。
「珈琲……とナポリタンね」
これからまだ散歩するし、小腹が減ったから腹ごしらえもしとくか…。
「お待ちどうさま
ナポリタンと珈琲です
…で、私の夕食はどうするの?」
「散歩の帰りにラーメンでも食べよう」
「…太るわよ」
「そのための散歩だよ」
閉店後、彼女と店を出ると満月が出ていた。
「…綺麗な満月だな」
「今月はコールドムーンね」
「コールド?…寒い月か?まんまだな…
…寒っ!」
「…早くラーメン食べて暖まろう」
俺達は身体を寄せながらラーメン屋へ急いだ。
end