第788章 チャリティーコンサート
大きなクリスマスツリーが飾られ、クリスマスキャロルが流れる。
「やっぱり教会のクリスマスは違うな」
「何か神聖な気持ちになるね」
もちろん俺も彼女もクリスチャンではない。
とある教会がゴスペルコンサートを開催するというので聴きにきた。
入場料はコンサートが終った後、チャリティーとして払う金額は各自で決めて良い。
「面白いシステムだね」
「これならみんながチャリティーに参加出来るわね」
コンサート開始までまだ時間があるので教会のあちこちを見て歩く。
見事なステンドグラスや黄金に輝くマリア像、天井にも宗教画が描かれている。
「教会って初めて入ったけど凄いね」
「どれも綺麗でステキ!」
俺も彼女も感動していると、神父が近付いてきた。
「チョット、イイデスカァ?」
聞き取れるけど、たどたどしい日本語だ。
「はい?」
「アナタハ、カミヲシンジマスカ?」
どこかで聞いた台詞だ。
「いや、俺達はゴスペルを聴きにきただけですから…」
「…ソウデスカ、タノシンデッテクダサイネ」
神父はにこやかに戻っていった。
「てっきり勧誘されるのかと思ったよ」
「私も…」
しかし、周りを見るとほとんどの人が首から十字架を掛けていた。
神父は俺達みたいに十字架を掛けてない人に声を掛けて回っていた。
しばらくすると、照明が暗くなりコンサートが始まる……と思っていた。
「お集まりの皆様、コンサートの前に大掃除をいたしましょう!」
ステージ上の神父がそう言うと俺達を始め何人かにスポットライトが当たった。
「この人達は異教徒です
掃除して下さい」
周りの人達の目付きが変わった。
殺されると思ったら、みんなに担がれ教会の外に送り出された。
看板をよく見たら、小さく信者限定と書かれていた。
後から分かったのだが、『異教徒大掃除』はこの教会恒例のイベントで、神父の言葉に『信じます』と答えればコンサートを観れたそうだ。
end