第78章 ジェネレーションギャップ
盆休み、実家に帰ったら、お袋から襖の張替えを頼まれた。
「俺は襖剥がすから、お前はホームセンターで唐紙買ってきてくれ」
俺は妻に買い物を頼んだ。
妻はキョトンとした顔で首を傾げている。
「カラカミ?何それ?」
俺は苦笑いするしかなかった。
俺と妻は、所謂“歳の差婚”で妻は20歳も年下だ。
唐紙なんて旧い言い方は知らなくても仕方がない。
「襖に張る模様の入った紙を昔は唐紙って言ったんだよ」
「ふ~ん、そうなんだ」
こんなジェネレーションギャップにも、もう慣れた。
妻と付き合い出したきっかけも、ある意味ジェネレーションギャップだったから…。
夏休み、部活の指導を終えて教室に来てみると彼女がいた。
「お前、なんで居るんだよ」
「あっ先生、部活が早く終わったから、暑中お見舞い書いてるんです」
俺は高校教師、彼女は教え子の一人だった。
「お前なぁ、立秋過ぎたら暑中見舞いじゃなく、残暑見舞いだ」
「え~そうなんですか?
そんなの習ってないです」
彼女は俺に膨れっ面をして見せた。
「ぷっ、はははっ
なんだ、その顔は!」
俺はその顔を見て、吹き出してしまった。
「先生酷い!」
真っ赤になって怒り出した彼女が、何か愛おしく感じてしまった。
「そう怒るな、習ってないなら仕方ないよな
分からない事があったら教えてやるから…」
「じゃあ質問!
…先生はなんで結婚しないんですか?」
恋が始まってしまえば、ジェネレーションギャップなんて些細なものだ。
翌年、彼女が高校卒業してすぐに結婚した。
end